「売れない家」だけ相続放棄は可能か?相続放棄は全財産が対象となる現実とは
「売れない家」だけ相続放棄は可能か?相続放棄は全財産が対象となる現実とは

相続は、亡くなった方からの大切な財産を受け継ぐ機会ですが、時には予期せぬ負担となることもあります。 特に、自宅に加えて、なかなか買い手がつかないような土地や古家を相続した場合、「このまま引き継ぐのは難しい」「どうすれば良いのだろう」と悩まれる方は少なくありません。 こうした状況で、価値の低い不動産だけを相続から外すことができればと考えるのは自然なことかもしれません。 しかし、相続においては、そう単純にはいかない現実があります。
売れない家だけ相続放棄は可能か
相続した不動産のうち、価値の低い「売れない家」だけを相続放棄することは、原則としてできません。 相続は、亡くなった方の財産全体に対して発生するものであり、その中から一部だけを選択して放棄するということは、法律上認められていないためです。
不動産の一部放棄はできない
民法では、相続人は相続開始の時に、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定められています(民法第896条)。 これは、財産価値のある不動産だけでなく、利用価値の低い土地や建物なども含めて、すべてが相続の対象となることを意味します。 したがって、相続人が「この不動産は欲しいが、あの土地は不要だ」と財産を選び取って相続することはできないのです。
相続放棄は全財産が対象
もし、相続した財産の中に明らかにマイナスとなるものが多い場合や、相続したくない不動産がある場合に、相続放棄という選択肢があります。 しかし、相続放棄は、対象となる財産を選ぶことができない手続きです。 相続放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。 これは、プラスの財産(自宅、預貯金、有価証券など)も、マイナスの財産(借金、管理負担の大きい不動産など)も、すべて含めて一切を放棄することを意味します。 つまり、売れない不動産だけを避けるために相続放棄をすると、本来受け取れるはずの価値ある財産まで失ってしまうことになります。
売れない不動産を相続した場合の現実
相続放棄をしない、あるいはできない場合、売れない不動産を相続した際には、いくつかの現実的な問題に直面することになります。
誰かが引き継ぐことになる
相続人全員が、その売れない不動産や土地を相続しないことを希望した場合でも、相続人の中から誰か一人が、その不動産を引き継がざるを得ない状況になることがあります。 相続人同士で遺産分割協議を行い、結果として、誰も望まない不動産を、誰か一人が相続することになるケースが少なくありません。
相続放棄で全ての財産を失う
もし、相続人全員がその売れない不動産を引き継ぐことを拒否し、かつ、他の相続財産(自宅や預貯金など)も不要だと判断して相続放棄を選択した場合、文字通りすべての財産を失うことになります。 これは、売れない不動産だけでなく、価値のある財産も一切引き継げないことを意味します。
問題が次世代へ引き継がれる
売れない不動産を相続した場合、その不動産を売却したり、有効活用したりすることが困難なため、ただ所有し続けるだけの状態になりがちです。 その結果、親の世代が抱えていた「売れない不動産」という問題が、子、孫へと世代を超えて引き継がれていくという「負の連鎖」が生じることがあります。 役所への寄付なども原則として難しいため、問題解決は容易ではありません。
まとめ
相続した不動産のうち、売れない家や土地だけを相続放棄することは、法律上できません。 相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する手続きであり、一部の財産だけを選ぶことは認められていません。 そのため、売れない不動産を相続した場合、相続人の誰かが引き継ぐか、あるいは相続放棄をして全ての財産を失うかの選択を迫られることになります。 この問題を解決しないまま放置すると、その負担が次の世代へと引き継がれてしまう可能性が高いです。 相続は、こうした現実を踏まえ、慎重に検討を進めることが大切です。
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